今回の症例は、「あれ、どこかで見たことあるかも」と思った患者様もいるかも知れません。当院で最近勤務している男性スタッフですが、以前から睫毛が下向きに生えており、しょっちゅう入って見づらく困っていたとのことで、今回手術療法を希望されました。
上の逆まつ毛に対する二重埋没手術の効果とダウンタイム
術前の写真では、一重で瞼が重く、おでこを使って持ち上げている様子がありました。
また、睫毛は瞼の皮膚に押し下げられて、睫毛が黒目にあたっている様子が、顕微鏡で確認できました。二重にして皮膚を折りたたんで、かつ睫毛の向きも変えられる、埋没二重を提案したところご希望されました。
それにしても、今は術後2週間くらいなのですが、新しい顔を見慣れてきて、こうやって術前の顔をみても、誰?って感じに思えますね。慣れってすごい。
術後1日目は左目(向かって右側)は、以前結膜炎があったのか、眼瞼結膜に癒着があり、そのせいか腫れが強く出ていました。しかし、腫れに左右差があっても、最終的には腫れは引いて同じ形になりますのでしばらくの辛抱です。心配になる方も多いと思いますが、腫れは待つしかありません。あと、過剰に保存的にし過ぎている方もたまにお見かけしますが、顔は翌日から水洗顔可能、シャンプーもして大丈夫ですし、術後3日めから湯船に入ったり運動をしたりということもやって大丈夫です。保存的にし過ぎても、血液やリンパ液の循環が滞って腫れが長引くと思います。
術後7日です。
右目はすっかり馴染んでおり、左目の腫れが少し遷延しています。しかし翌日よりは確実に良くなっています。右目もまだ顕微鏡で見るとむくんでいる感じはあります。
術後2週間です。だいぶ腫れは落ち着いてきました。睫毛は入らなくなり、とても目が開けやすくなったと喜んでいただけました。腫れは著しく改善していますが、それでも術後3ヶ月、半年後と比べると、まだ腫れぼったさがあるのですが、どんどん良くなっていくでしょう。
術後経過も良好ですが、一医療人として自分が病気や手術を経験すると、患者さんの気持ちがよくわかり、看護師としての経験値が上がります。特に術前術後の説明は身を持ってお話できているからか、「こないだ術後の説明をしてくれた男性が本当に優しくて…」と患者様からもお言葉をいただけたそうです。
また、彼と同じ年代の方も結構手術を受けるのですが、手術の先輩として色々アドバイスできているようです。マリン眼科での経験が彼のこれからの職業人生における糧となるよう、いろいろな経験をしてもらいたいです。
切らない眼瞼下垂のニーズについて
さて、昨日5月30日は美容外科学会に出席したのですが、保険診療がベースの私達にとって、美容外科は完全に異業種でした。ライブサージャリーあり、トークショーのような討論、タレントのような登壇者、華やかな美容ナース達…。眼科の学会とは全然雰囲気が異なっており、なんだか気後れしました。
それでもライブサージャリーのセッションでは、歯に衣着せぬ討論に驚愕しつつも、非常に勉強になりました。また、自費診療でも、保険診療でも、それぞれが技術を磨いてより良い手術を目指しているという点においては共通しており、学ぶべきことが多かったです。
去年は美容皮膚科学会に参加したのですが、美容皮膚科学会は手術が欠けており、どっちかというと私はこっちかもしれないと思いました。(根っからの手術好き)
上まぶたの手術のセッションでは、切らない眼瞼下垂手術の動画の供覧があったのですが、切らない眼瞼下垂手術のニーズについて、今まで考えたことはなかったのですが、結構切りたくない人は多いのかもしれないと思いました。切ったら出血しますし、皮膚は開くし、傷はしばらく目立つし、皮膚の違和感が暫く残るし、やっぱり切るのはハードルが上がるのかもですね。自分自身でも、少なくとも時期などは考えてしまうと思います。
眼瞼下垂で困っており、治したいけれどダウンタイムが怖い、切るのがいや、という人には切らずに済むオプションを用意すべきと考え、切りたくない人には経結膜ミューラー筋タッキング手術も検討に加えようと思います。
切らない眼瞼下垂手術・経結膜ミューラー筋タッキング
経結膜ミューラー筋タッキングは結膜側(眼球側)から糸を埋没してまぶたを持ち上げる筋肉であるミューラー筋を短縮する手術です。そのまま皮膚側に糸を出せば二重を作ることもできます。私があまりこれまでこの手術を行ってこなかった理由としては定量性がなく、仮縫合ができないこと(つまりお顔の確認が行えない、一発勝負の手術であるということ)、埋没は糸が緩むと再発してしまう、皮膚切除ができないので皮膚が余っている人には適さない、等です。
しかし、切らないことで、手術時間が短い、出血が少なく、傷が目立たない、ダウンタイムが短くて日常生活への影響が少ないのは患者さんにとって大きなメリットだと思います。また、埋没法の欠点でもありますが、糸を外せばもとに戻るというのも、気に入らなければ外せば良いのでメリットとも言えますね。
もちろん眼瞼下垂がない皮膚弛緩のみであれば、通常の埋没縫合による二重手術も術式として検討には挙がります。
経結膜ミューラー筋タッキングについてはいずれブログで詳しく解説しようと思います。本日はかぶさる皮膚と逆まつ毛を二重埋没手術で改善した症例のご報告でした!
眼瞼下垂手術について
元町マリン眼科では、眼瞼下垂の日帰り手術を行っています。眼瞼下垂手術は下垂による症状があり、診断基準を満たせば保険適応での手術が可能です。
瞼が下がって視界が狭い。
上の方や横の方が見にくい。
テレビや本を見ていると瞼がつぶれてくるので手で持ち上げている。
おでこや頭に力が入って頭痛や肩こりが取れない。
睫毛が被さって見にくい、あるいは睫毛が良く入る。
などが代表的な症状です。眼瞼下垂でお困りの方は、元町マリン眼科へご相談ください。
手術の費用:3割負担で両眼で50000円前後、1割、2割負担の方は自己負担上限金額です。また、眼瞼下垂を伴う全身疾患が疑われる場合は初診時に採血を行います。初診料と合わせて6~7千円程度かかります。
手術時間は両眼で1時間程度で、局所麻酔下に行います。
ダウンタイム:2~3日はかなりまぶたが腫れます。1週間後に抜糸を行います。内出血は2週間程度で徐々に軽快します。1ヶ月位は朝むくんだり、まぶたが赤いなどの症状が見られることがあります。傷の赤みは半年くらいで徐々に改善していきます。
リスク:出血、痛み、低矯正、再発、創感染、薬剤アレルギーなど、ごくまれに瘢痕形成。
この記事の執筆者
元町マリン眼科
院長 蓮見由紀子
所属学会・認定医
医学博士
日本眼科学会認定専門医
横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)