こんばんは。院長の蓮見です。
今日はバセドウ病で起こりうる目の症状について解説したいと思います。というのも当院で最近、瞼の腫れが治らないので調べた結果、バセドウ病が見つかった方がいたからです。
バセドウ病とは、甲状腺機能亢進症を起こす病気の代表的な病気です。甲状腺とは、喉の前面にある内分泌器官です。バセドウ病が進行すると、この部分が腫大して目に見えるようになります。
バセドウ病はきれいな若い女性に起こりやすいイメージかもしれませんが、男性と女性の比率は1:4~5だそうです。また、家族歴があると発症リスクは20~40倍にもなるそうです。
甲状腺ホルモンは、全身のいろいろな臓器にそのレセプターがあり、代謝などに影響します。ホルモン値は適正な値の範囲があり、高すぎると機能亢進症になりますが、低いと甲状腺機能低下症になります。
バセドウ病の原因は自分の体内で自己に対する抗体が出来てしまい、その自己抗体が甲状腺を刺激してしまう事により甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて、甲状腺ホルモン値が異常高値になります。
症状
全身症状としては、
体重減少
発汗の増加
頻脈
手の震え
などが代表的です。また、イライラしたり落ち着きがなくなることもあります。
甲状腺が原因で眼に起こる症状は、甲状腺眼症と言われます。
眼が飛び出てくる(眼球突出)
ものが二つに見える(複視)
が特に有名な症状で、他にも
眼球突出…眼球の奥の組織(眼窩)の炎症のため
眼瞼後退、とくに上眼瞼…眼球突出の結果
涙腺の腫れ…涙腺組織に炎症が起こるため
複視…眼球を動かす筋肉に炎症が起こるため
兎眼(目が閉じなくなること)
兎眼による角膜炎、ドライアイ
視神経炎…眼球の奥の部分の眼窩先端部に炎症が起こり神経に波及するため
などがあり、ひどくなると視力低下や失明の可能性もある怖い病気です。
上記のような症状がみられたら、まず採血をして甲状腺ホルモン値や甲状腺の自己抗体を測定します。ホルモン値が異常であれば、CTやMRIなどで目の周りの組織の画像診断をします。診断基準を満たせばバセドウ病と診断されます。
治療
内科的治療は他に譲りますが、全身の病気ですから当然投薬による治療を開始します。また、喫煙は疾患の増悪因子であり、禁煙が推奨されます。眼の治療は眼症の程度によって行います。
複視があればものを見るのに不便ですのでプリズム眼鏡などで対応します。
またドライアイに対しては、点眼や軟膏で対症的に治療します。重症の場合は涙点プラグや涙点閉鎖を行う事もあります。
眼球周囲の炎症が強い場合はステロイドの注射を眼球の周囲に打つ事があります。
兎眼による角膜混濁や穿孔の恐れがある場合、または、視神経炎を来している場合は最重篤のため、ステロイドパルスや内服の適応となります。効果がなければ減圧術(眼窩の炎症組織をとって、圧力を逃がすこと)を検討します。
今日はちょっと難しい病気のお話でした。いつもブログをご覧くださりありがとうございます!
この記事の執筆者
元町マリン眼科
院長 蓮見由紀子
所属学会・認定医
医学博士
日本眼科学会認定専門医
横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)