さて今回は、またまた珍しい病気の解説です。
その方は40代の方で、いつの頃からかわからないが「右眼がぼやける、歪んでいる」という事でいらっしゃいました。
この歪んでいる、という状態は、網膜の病気を疑います。
網膜とは目の奥にある、像が映るスクリーンの役割をしている膜ですが、その形がゆがんでいると物がゆがんで見えるのです。40代だと、黄斑前膜にはやや若いけれど、あり得ないことはないな、と網膜の断面図の検査(OCT)を行いました。
すると、膜は膜でも黄斑の上ではなく、みぎ視神経乳頭の上に膜がありました。
もっとささやかな膜は見たことがあったような気がしますが、こんなにはっきりとした乳頭前膜を見たのは初めてでした。
これが先天乳頭上膜(Bergmeister's papilla)というもので、胎生期にあった硝子体動脈の遺残物です。
硝子体動脈は眼の発生段階で、視神経からレンズを栄養している動脈ですが、普通は眼が開くころには退縮しています。それが膜状に残っているのがバーグマイスター乳頭だそうです。血管の残骸ですが、今は血流はなく、グリアと呼ばれる神経細胞の成分でできていると言われています。
では、これが歪んで見える原因だったのでしょうか?
それはおそらく違うと思います。
胎生期にできるものですから、生まれつきあったはずで、ある時にゆがみを自覚した、という訴えにはならないでしょう。
乳頭部はマリオット盲点というもともと見えない暗点があります。その前に膜があっても、見え方に影響はないはずです。
ゆがみについて、改めてお話を聞いたところ、乱視のような見え方でした。その方は右眼に左より強い乱視があったので、それによる裸眼視力の見え方の悪さをおっしゃっていたのだと思います。
このように、偶然見つかることが多い疾患だそうです。
進行性はなく、視力に影響を及ぼすことはあまりないのですが、一例報告で、膜が収縮して黄斑円孔になった、牽引性網膜剥離をおこした、という報告があります。
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#網膜剥離