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執筆者の写真HASUMI

前頭筋吊り上げ術の術後経過

今回は、滅多に適応症例がない術式、前頭筋吊り上げ術の術後経過をご報告いたします。*患者様のご了承を得てお写真を掲載しております。ご協力ありがとうございました!



前頭筋吊り上げ術について



先天性眼瞼下垂や神経の麻痺、外傷後などで挙筋機能が著しく低下している方が適応となる術式です。ナイロン糸を用いる方法、ゴアテックスシートを用いる方法、体の他の部位から腱を採取して移植する方法などがあります。二重の線の中と眉毛の上に小さな傷を作り、瞼の中にトンネルを作成して糸やシートを挿入し、二重の傷から瞼板に縫い付ける手術です。引っ張り上げるのはおでこの筋肉(前頭筋)のため、眉毛を挙げられる方でないと適応がありません。正面視では良いのですが、下を向いた時に瞼が下がらないので違和感があります。挙筋前転を全力でやっても上がらない方が対象です。



前頭筋吊り上げ術の適応となった症例



今回の患者様は90代の女性の方です。数年前左の眼瞼下垂を治したくて、近くの総合病院の眼科を受診したところ、右目の網膜剥離が見つかり手術を受けたそうです。その後、他の眼科で左の眼瞼下垂手術を受けたのですが、あまり上がらずこれが限界ですと言われたとのこと。諦めきれずに家族がインターネット検索で当院を探して受診されたのです





左は瞳孔がすっかり隠れており、使えない目になっています。この患者様が左目を諦められないのは、右目が網膜剥離の術後で視力が不良だからなのです。通常の方法で全力でやっても挙上不良な症例で、前頭筋吊り上げ術の適応と考えられます。左眉は挙上しており、前頭筋を使うことはできそうです。


まずシミュレーションでナイロン糸による吊り上げを行いました。

眉毛の上に小さな傷がありますが、その中にナイロン糸を埋没しています。眉毛が下がり瞼の際との距離が縮まりました。黒目もある程度は見えるようになり、この時点では患者様は「見えます!」と喜んでいました。



ところが、1ヶ月後の術後再診の時に、「また下がってきてしまった」とおっしゃいました。




ナイロン糸だから緩んだのかもなのですが、術前にあんなにつり上がっていた左の眉毛が術後下がってしまったのも一因かもしれません。糸でのつり上げは仮縫いなので、今度はサスペンダーというゴアテックスでできたシートを挿入する手術を行いました。


1週間後はものすごい血腫ですね。トンネル掘るのはブラインドなので仕方がありません。

御本人は見やすくなったとおっしゃっていました。術直後は複視の訴えがあったのですが、両眼で見るようになって斜位が改善したようです。ひどい眼瞼下垂では、開いてない方の眼は廃用性の斜視になることがあります。術直後は廃用性斜視が顕在化しましたが、両眼視するようになったということですね!






術後1ヶ月の様子です。今度は「見えています」とのこと。おでこを使って挙げることもできているようでした。この手術は眉毛と瞼の際までの距離が固定されており、おでこの筋肉で開け閉めをすることになりますので、あまり挙げ過ぎると兎眼(目が閉じないこと)を来してドライアイで苦しむことになります。

また、下を向いた時は健常眼は瞼が下がりますが、吊り上げ術後は下がりません。(Lid ragといいます)そのため、ギョロッとした見た目が耐えられないという方もいらっしゃいました。そのための仮縫いなのです。



今回は、あまり適応症例はないけれども、必要な方は一定数いる前頭筋吊り上げ術の術後経過のご紹介でした。今回の症例も非常に学ぶことが多かったです。お写真のご協力もありがとうございました。

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眼瞼下垂手術について


元町マリン眼科では、眼瞼下垂の日帰り手術を行っています。眼瞼下垂手術は下垂による症状があり、診断基準を満たせば保険適応での手術が可能です。


  • 瞼が下がって視界が狭い。

  • 上の方や横の方が見にくい。

  • テレビや本を見ていると瞼がつぶれてくるので手で持ち上げている。

  • おでこや頭に力が入って頭痛や肩こりが取れない。

  • 睫毛が被さって見にくい、あるいは睫毛が良く入る。



などが代表的な症状です。眼瞼下垂でお困りの方は、元町マリン眼科へご相談ください。


手術の費用:3割負担で両眼で50000円前後、1割、2割負担の方は自己負担上限金額です。また、眼瞼下垂を伴う全身疾患が疑われる場合は初診時に採血を行います。初診料と合わせて6~7千円程度かかります。


手術時間は両眼で1時間程度で、局所麻酔下に行います。


ダウンタイム:2~3日はかなりまぶたが腫れます。1週間後に抜糸を行います。内出血は2週間程度で徐々に軽快します。1ヶ月位は朝むくんだり、まぶたが赤いなどの症状が見られることがあります。傷の赤みは半年くらいで徐々に改善していきます。


リスク:出血、痛み、低矯正、再発、創感染、薬剤アレルギーなど、ごくまれに瘢痕形成。


この記事の執筆者


元町マリン眼科

院長 蓮見由紀子



所属学会・認定医

医学博士

日本眼科学会認定専門医

横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)








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