先日、結構大きな霰粒腫のために来院されたお子様のご家族が、田勢先生に「前医でこれだけ大きい霰粒腫だと、乱視が起こって視力障害につながるおそれがある、と言われて心配して来た」とおっしゃられたんだそうです。
確かに小さい子で一定の期間、大きな霰粒腫で視界が妨げられたり、角膜が押されて乱視が起こったら視力の発達に影響しないか心配ですね。
なので霰粒腫が乱視を起こすことがあり得るのかどうか文献を調べてみました。医中誌という和文の論文を検索できるサービスがあるのですが、それで調べるとかなり昔の論文がヒットしました!
昭和13年の眼科雑誌の論文の紹介
昭和13年の論文ですが、21歳の女性と24歳の男性が視力障害を主訴として受診、ふたりとも上眼瞼に霰粒腫があり、また近視性乱視があったが、霰粒腫手術後に乱視はなくなり、角膜曲率も変化したので、霰粒腫による角膜乱視だった、と結論付けています。
それ以外のヒットする論文は最近のものはなかったのですが、2015年にLASIK後の薄くなった角膜が、大きな霰粒腫に押しつぶされて乱視を惹起し視力が低下した症例の報告がありました。
なので報告は少ないですが、霰粒腫が角膜乱視を起こす可能性というのはあるようです。ただし、どのくらいの大きさから乱視を起こしうるか、とか、何ヶ月続いたら視力の発達を阻害する、とかはわかりません。大きな霰粒腫は吸収するまでに数ヶ月以上かかることもあります。しかしずっと大きいわけではなく、小さくなったり大きくなったりを繰り返しつつ少しずつ吸収されていくので、ある程度の大きさ以下になれば角膜乱視を起こす可能性は少ないと思います。
霰粒腫は切開して中身を出して、吸収を早め治癒までの期間を短縮できる効果が期待できます。しかしころっと出るようなものではありませんので、明日になったらぺったんこになっているとか、そういう手術ではありません。切れば痛いし出血しますし、麻酔で腫れます。
霰粒腫は悪性の病気ではありませんし、切らなくては治らない病気でもありません。(ただし、高齢者のなかなか治らない霰粒腫は悪性のものである可能性があります、その場合は生検します)
切るかどうかは本人や家族の意向次第です。
小さいお子様で、結構大きくて、吸収までに時間がかかりそう、瞳孔を覆ってしまって見にくそう、乱視が心配、ということであれば切開するのも一つの選択肢と思います。
元町マリン眼科の霰粒腫摘出術
当院では霰粒腫の切開摘出手術に対応しております。
手術は局所麻酔で10分程度です。帰りは眼帯装用ですが、帰宅後は外して止血していればそのまま眼帯はなしでお過ごしいただけます。
手術後洗顔できないなどの生活の制限は特にありませんが、長湯や飲酒は当日は避けていただきます。
翌日の診察は不要ですが、1週間後に治ったかどうかの確認のためお越しいただきます。皮膚を縫合した場合は1週間後に抜糸が必要です。
お子様の霰粒腫は1歳から全年齢の実績がありますが、麻酔ができるのは7~8歳くらいからです。小さいお子様ではテープ麻酔ののち、20秒位で切って中身をなるべく出す手術となります。暴れると危険ですのでスタッフが押さえて手術をするという、お子様にとってはかなりストレスとなる手術です。しかし全身麻酔や入院をしなくて良いという利点があります。
最近は外来が混み合っており、当日の処置は難しくなっております。処置ができる時間帯は限られておりますので、遠方からお越しで、当日の処置をご希望される場合はお電話にてご予約をお願いします。
また、必ずしもご予約の時間に処置ができるとは限りません。外来の混み具合によりお待ちいただく可能性があります。お時間に余裕を持ってお越しください。
本日は偉大な先人の報告を紹介いたしました。いつの時代もイノベーションを起こす人は野蛮人なんでしょうね。私も80歳くらいになったら周囲から理解が得られるような医師になりたいです。