院長の蓮見です。
医学部は6年間なのですが、最後に医師国家試験に合格しないと医師になれません。国家試験の問題は内科外科、マイナー科と全科にわたり、医学生はありとあらゆる疾患についての知識を詰め込みます。勿論それは理解とは程遠いものであったと、今になっては思うのですが、そうやって叩き込んだ知識が今の眼科診療にも役立つこともあるのです。
それは疾患の代表的な主訴であったり主症状だったりを丸暗記します。
多飲多尿…糖尿病
蝶形紅斑…SLE
空腹時の胃の痛み…十二指腸潰瘍など、いろいろあるのですが、
朝のこわばりは国家試験的には関節リウマチなのです。
関節リウマチは、変形を伴う関節炎を起こす自己免疫病です。中年以降の女性に起こりやすい病気です。
しかし、朝のこわばりはが起こるのは関節リウマチだけではないのです。
じつは更年期症状でも、関節の痛みやこわばりが起こることがあるようです。
更年期症状とは・・・
エストロゲンというホルモンがあります。言わずと知れた女性ホルモンですが、男性の体内でも作られています。またエストロゲンのターゲットとなる受容体は生殖器だけでなく、骨、脳、肝、前立腺、血管壁、肺など多くの臓器に発現していて、身体の健康維持に重要な役割を果たしています。
40代半ばになると、このエストロゲンの分泌量が落ちて、いわゆる更年期症状を引き起こすのです。
エストロゲンの受容体は手指の関節や靭帯にも発現していて、エストロゲンの低下が、関節の痛みや腫れ・しびれなどを起こすと言われています。
更年期症状の治療は、減少したエストロゲンを補う、いわゆるHRT療法がありますが、エストロゲン依存性疾患である乳癌や子宮体癌のリスクが上昇するなど、マイナス面もあります。
近年、エストロゲンと似た作用を持つ大豆イソフラボンが注目されています。大豆に含まれるイソフラボンが、腸内細菌に代謝されると、更にエストロゲン活性の高いエクオールとなります。
なので40代以降の女性は、大豆製品の積極的な摂取がお勧めなのですが、日本人の2人に1人はエクオールを産生する腸内細菌を持っていないのだそうです。欧米人は更に少なくて、3人に1人くらいとの事です。
そこで、エクオールを補うサプリメントがあります。エクオールにはエストロゲン様作用の他に、エストロゲンと競合的に受容体に結合することにより、抗エストロゲン作用も有すると言われています。
更年期症状は全部で500種類以上あるといわれ、加齢に伴い誰もが経験しうるのですが、その程度や症状は千差万別です。
辛い症状は和らげて、これからの生活も元気にはつらつと過ごしたいですよね。
関節などの症状は、リウマチなどの疾患を否定して初めて更年期症状の一部と診断できます。更年期だから、と片付けてしまいがちですが、重大な病気が隠れていることもありますので、心配な症状があれば、まずはリウマチ内科などをご受診下さい。