おはようございます。昨日は桜木町の救急医療センターというところで当番でした。
毎日20時~24時、市民の健康を守るため、持ち回りで出勤しているのです。
夜間救急センターは横浜市には3つあるみたいですが、他の2か所は内科と小児科のみで、桜木町だけには眼科と耳鼻科が常設されているようです。
昨夜はそんなに重症の方はおらず、平和な夜でしたが、お一人珍しい病気の方が来ました。
「夕方から右眼が白っぽくかすんで見にくい」
と言う事でいらっしゃった30代の方。
急に白っぽく霞んできた、という訴えだと、私達眼科医は、「眼圧が上がってるんじゃないかな。緑内障発作かもしれない」
と思います。
しかし30代で緑内障発作はほとんどあり得ません。なぜなら、緑内障発作を起こす方は大体白内障を合併しているからです。
だとすると次に考えられるのは炎症による眼圧上昇です。ぶどう膜炎などで起こり得ます。
患者さんは男性でした。やはり霞んでいる方の眼圧が34mmHg(ミリ水銀柱と読みます。眼圧の単位、21mmHg以下が正常値)まで上がっていました。しかしあまり痛そうな様子はありませんでした。
次に目の中を観察するとやはり炎症が起こっていました。この炎症は特徴的な角膜後面沈着物というものを伴っていました。
患者さんに今まで、同じようなことがなかったか尋ねたところ、同じ目にこれまでも繰り返し同じことが起こったと言う事でした。
ここまでで、この患者さんの病名は「ポスナーシュロスマン症候群」という病気だとほぼ断言できます。
難しい名前ですが、眼科専門医なら誰でも知っている、でも眼科医以外にはほとんど知られていない病気です。
ポスナーシュロスマン症候群はアメリカのPosnerとSchlossmanにより報告された、炎症を起こし発作的に眼圧上昇を来すぶどう膜炎です。
眼圧上昇は炎症が起きている間だけで、消炎すれば眼圧は下がります。そのため視神経へのダメージは起こらず、緑内障になることはまれです。また、眼圧上昇にもかかわらず、痛みが少ないのが特徴です。通常眼圧が急上昇したら頭痛や吐き気が必発ですが、この病気の方は多少の圧迫感があるものの、そこまでの痛みがないのです。
原因はわかっていませんが、ストレス、ウイルスなどの説があります。通常は片眼性ですが、まれに両眼に起こす方もいます。再発性です。
治療は炎症を抑えるためのステロイド点眼と、眼圧を下げる目薬や点滴、内服などを処方します。発作を予防する治療法は今のところなく、対症療法になります。
この方も点滴で眼圧は無事に下降し、楽になったといってお帰りになりました。
今日はぶどう膜炎のうちのポスナーシュロスマン症候群についてお話ししました。
実は私の専門分野はぶどう膜炎なのです。そろそろぶどう膜炎シリーズを展開したいと思います。