こんにちは、院長の蓮見です。
緑内障という病気は、一般的には眼圧が高いことにより視神経が圧迫されてすり減ってしまい、視野が欠ける病気、と理解されていると思います。
しかし、緑内障というのは実は、原発性、続発性、開放隅角、閉塞隅角、急性緑内障発作、、、などいろいろな病型を総称して大きなカテゴリーとしての緑内障なのです。
今日はその中の一つ、落屑症候群と落屑緑内障/水晶体嚢性(すいしょうたいのうせい)緑内障に焦点を当ててみたいと思います。
落屑とは❓
落屑とは、皮膚の表面の角質が厚くなって剥がれ落ちるいわゆるフケの学術用語です。水晶体嚢というのは水晶体を包んでいる膜のことです。眼の中にはレンズがありますが、その袋に白いフケのようなものが表面につくことからこの名前が付いたのです。
頭のフケは、頭を数日洗わなかったら誰でも起こるものですが、眼の中の「フケ」は普通起こりません。これができる人が落屑症候群です。
落屑は眼の中で産生されて、瞳孔の縁、水晶体の袋上、そして眼の中の排水溝となる線維柱帯に溜っていき、線維柱帯の通過障害がおこり、眼圧が上昇する原因となってしまうのです。眼圧が上昇すると、他の緑内障と同じように、視神経が障害されてしまい、視野が欠損してしまいます。(落屑緑内障)
落屑症候群の疫学
落屑症候群は50歳以上の方から見られはじめ、年齢が高くなるほど有病率は高まります。
日本の多治見で行われた大規模な疫学調査では40歳以上の人口の0.8%に見られたそうです。年代別では、40代では0%、50代で0.2%、60歳代で1%、70歳代1.9%、80歳代で3.0%の有病率だったそうです。また、国内外のいくつかの地域の疫学調査では、落屑症候群の有病率に地域差があることが示唆されています。北欧では多く、アジアでは少ないそうです。
落屑症候群の原因
落屑症候群の原因は遺伝的な要因もあることが示されています。LOXL1という遺伝子はエラスチンやコラーゲンの架橋に関わる遺伝子であり、落屑物質にもLOXL1タンパクが含まれています。この遺伝子が最初に同定され、複数の遺伝子が関連づけられていますが、真の原因は解明されていません。
落屑症候群の感受性遺伝子を持った人の割合は、患者では99%でしたが、健常群でも85%が感受性遺伝子を持っており、何らかの環境要因もあるのではと言われいています。
北欧に多いという疫学的な調査がありますが、北米の研究では、スカンジナビア系の人種に多いと言う事はなく、また、緯度が高いとリスクが高まる報告があり、外気温が発症に関わっているのではないかと推測されています。
また、青年期に屋外(特に雪上や水上)で長時間過ごすと落屑緑内障のリスクが高まったと報告されています。
葉酸の摂取は落屑症候群のリスクを低下させ、コーヒーの多量摂取は高ホモシステイン血症を通じてリスク要因となっている関連性が推測されているそうです。
今日は落屑症候群と落屑緑内障について解説しましたが、治療については次回に続きをお話ししたいと思います。