元町マリン眼科院長の蓮見です。
ヘルペス属のウイルスは目にぶどう膜炎や角膜炎、網膜炎などを起こします。このヘルペスウイルスの厄介なところは、一度感染したら、終生私達の神経節細胞に潜伏していて、免疫力が落ちてきた時に、末梢神経に出てきて症状を起こすことです。
ヘルペスによる眼疾患はどれもしつこくて重篤で時に失明に近い状態になることもあります。特に急性網膜壊死という、視神経から神経細胞の膜である網膜に帯状ヘルペス(VZV)ウイルスの再活性化が起こってしまう病気は、点滴で抗ウイルス薬を大量に投与してウイルスをたたいても、壊死した網膜が網膜剥離などを起こし、非常に手術も難しい疾患です。
Rebecca I. Chenら。American Journal of Ophthalmology Case Reports • December 2020
以前元町マリン眼科でも、帯状疱疹ワクチンを開始したことをお伝えしました。
当院で行っている帯状疱疹ワクチンはシングリックスというアジュバント添加組み換えワクチンです。
帯状疱疹を95%という高い確率で予防することはもちろんですが、ヘルペスの他の全身合併症を予防するかという解析をした論文があります。
ヘルペスの全身合併症には、前述の眼の合併症に加えて、脳神経麻痺(ベル麻痺は有名ですね)、脊髄炎、末梢神経麻痺、内臓疾患、ヘルペス血管炎、脳卒中、、、などたくさんあるようです。
解析は帯状疱疹の発症を抑えられるかの治験を行ったオリジナルのグループで行われました。
参加人数はワクチン群が13881人で、プラセボ群が14035人でした。
そのうち、帯状疱疹を起こしたのはワクチン群が32人、プラセボ群は477人でした。
ワクチン群では帯状疱疹になった32人のうち、1名が眼症状を合併しました。
プラセボ群では帯状疱疹を発症した477人のうち、8名が眼症状を合併した(うち1名は神経疾患と眼疾患を併発)との事です。
これはワクチンがヘルペスの眼疾患を予防していると言えるのか、と言う事になると、プラセボ群で8名だったところ、ワクチン群が1名だったので、87.5%抑制している、と言えそうな気もしますが、13881人中の1人と14035人中の7名はどちらもとても少ないので、統計学的に有意に抑制している、とは言えないそうです。
ですが、私は眼科医として、ヘルペスの眼に対する恐ろしさをよくわかっているので、やっぱり予防接種は打てるなら打った方が良いのではと思います。ヘルペスの眼病変は帯状疱疹と同じで、初感染ではありません。潜伏感染の再活性化で起こるわけなので、ワクチンが帯状疱疹を予防できるのなら、眼病変も予防できるのではないかと思います。
帯状疱疹ワクチン接種は保険がききません。自費での接種になります。
費用は1回22,000円となります。2か月あけての2回接種が必要です。
予約制となりますので、ご希望の方はお電話でご予約下さい。