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網膜血管が破裂する網膜静脈閉塞症の治療経過

更新日:2022年6月17日


このところ、スッキリしないお天気が続いていますね、、マリン眼科のある横浜も梅雨入りしたんでしょうか。


今日は以前ブログでも解説した網膜静脈閉塞症の治療について、説明したいと思います。

網膜静脈閉塞症はその名の通り、網膜の静脈が詰まる病気です。血管が詰まる原因は、動脈硬化と炎症の2つの機転が考えられます。

動脈硬化で閉塞する場合は、中高年で血圧が高めの方や血糖値が高いなどの基礎疾患があることが多いです。若い方は血管の炎症などでつまりかけて発症する事があり、この場合は視力の予後は良好のことが多いです。



今回は実際の症例を患者様の了解を得て掲載させて頂きました。(お写真のご協力ありがとうございます)


写真の方は去年の年末ごろ、数週間前から左眼がぼやけているとの事で受診されました。視力は0.8~0.9と軽度の低下でしたが、眼底は下のように出血を起こしていました。



網膜静脈分枝閉塞症です。出血が黄斑という網膜の中心に微妙にかかっています。

この中心部が病変に含まれるかどうかで視力がだいぶ変わってしまうのです。出血がおこった部分は出血を吸収する過程で炎症が起こります。その炎症で網膜が痛んでしまうと視力が落ちてしまい、戻らなくなってしまうのです。


現在では、この病気の治療は網膜の炎症やむくみを抑えて視力の低下を最小限に抑える方針となっています。



上の写真は網膜の断面図です。向かって右側は、左側半分と比べて網膜の厚みは3倍くらいに膨れてしまっています。網膜が激しい炎症のため浮腫んでしまっているのです。


この方には、網膜のむくみを取るために注射の治療をお勧めしました。

網膜のむくみを取るための治療には、ステロイドのテノン嚢下注射と、抗VEGF薬の硝子体注射の2つの方法があります。注射については過去のブログもご参照ください。


まずステロイドのテノン嚢下注射を行いました。

ステロイドは即効性はやや劣りますが、テノン嚢下には3ヶ月くらい滞留してその間マイルドに効果を発揮します。ステロイドは、白内障や緑内障の副作用がおこることがあるので白内障手術前の若い方にはあまり使われなくなってきました。しかし、様々な炎症性物質を非特異的に抑えることが出来るステロイドの使用価値は現在も衰えることはないと思います。



ところが、網膜のむくみが強すぎて、ステロイドではあまり著効しなかったので、抗VEGF薬を追加投与することにしました。




注射2週間後の写真です。網膜の真ん中、黄斑部は少し凹んでいるのが正常の形ですが、窪みが回復しています。出血の影はあるものの、見え方は良くなったと言う事でした。


一度破裂して出血を起こした網膜は、ゆっくりと出血を吸収していきますので、出血が吸収されればむくみが再燃する頻度は少なくなります。

ですのでこの病気の場合は、注射の回数は年々減っていき、最初の1年は5~6回注射が必要ですが、そのうち3ヶ月、半年と注射の間隔は延びていくことが多いです。最終的には注射の治療をやめられるケースもあります。


この病気の予後は血管の詰まりの場所と範囲、虚血の程度によって様々です。血管の詰まったところは酸素不足に陥り、新生血管という質の悪い血管が生えることがあります。その新生血管が数年~数十年後に突然硝子体出血を起こして真っ暗になることもあります。網膜のレーザー治療は、その新生血管を予防したり勢いを弱めたりするのに効果があるとされています。



今回はちょっと難しいお話でしたね。網膜静脈閉塞症については、過去のブログも参照してください。また、ステロイドの注射についても過去にブログ記事がありますのでよかったら参考にしてみて下さい。






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