院長の蓮見です。
前回に引き続き、落屑(らくせつ)症候群の解説です。
落屑症候群のマネージメント
落屑症候群の方の15%が落屑緑内障、または高眼圧症に進行します。
そのため落屑症候群の方は、定期的な眼圧と眼圧のチェックが必要です。落屑症候群の方は眼圧の変動が大きい印象があります。そのため、来院時には眼圧が正常でも、他のタイミングでは高い可能性はあります。頻回に眼圧をチェックすれば、高いタイミングを見つけられる可能性は高まります。
また、今日ではOCTによる眼底検査を行えば、視神経が擦り減っているかどうか、わかる時代になったので、視神経が障害されている所見があれば、点眼などで眼圧を下げる治療を開始します。
眼圧が上昇した落屑緑内障では、他の緑内障と同じようにまずは眼圧を下げる点眼を行います。点眼を組み合わせて目標眼圧まで眼圧を下げますが、下がらなければ、レーザーや手術を検討します。
選択的線維柱帯形成術(SLT)というレーザーが、この病型の方に有効率が高い事は知られていますので、手術に踏み切る前に、一度はSLTレーザーも検討して良いと思います。
落屑緑内障は他の病型と比較して、進行のペースが速いのが特徴です。落屑緑内障は、もともとの眼圧が高めであることが多く、また、患者さんの年齢も高めです。高齢というのはいろいろな理由で治療が難しくなります。
眼圧の変動は視神経にダメージを与える可能性があり、安定して低い眼圧を保つことが、緑内障の治療目標となります。
落屑症候群の合併症
落屑症候群は緑内障のリスクが高いだけではなく、他の眼の疾患を合併する事があります。
落屑は、線維柱帯に蓄積すれば緑内障を起こしますが、落屑はチン小帯という、水晶体を支えている釣り糸のようなものを傷めます。
そのためにレンズはぐらぐらになり、瞳孔は散瞳しにくくなります。
瞳孔が開きづらいため、白内障手術が難しくなり、レンズを入れている袋が破けて、レンズが入らなくなる破嚢という合併症のリスクが高まります。
また、チン小帯へのダメージは術後もずっと続くため、無事に白内障手術が終了したとしても、晩年にレンズがずれて見にくくなる眼内レンズの亜脱臼や脱落のリスクが常にあります。そのため、眼圧管理も含めて生涯を通じての眼科通院が必要となります。
落屑症候群の方は、エラスチンに異常があると言われており、冠動脈疾患のリスクが高いと言われていますが、平均寿命は健常者と変わりません。人生100年時代の視力を保つためには、視野の悪化が進行している場合は、レーザーや手術へステップアップを積極的に考えたい病型と言えます。
いかがでしたか?かなり難しい内容となってしまいましたが、前回と今回は眼の中にフケ様の物質が溜まって緑内障のリスクが高まる、落屑症候群について解説しました。
元町マリン眼科では、緑内障の検査を行っております。40代になったら、一度は眼底検査や緑内障のチェックを受けましょう。