こんにちは、院長の蓮見です。
去年はコロナの影響で近視が進んでしまったお子さんが増えたのを肌で感じています。
近視になっているとお伝えすると、決まって親御さんは
「ついに目が悪くなった…」
とショックを受けます。しかし、悪い目というのは語弊があります。
近視は「近くが得意な目」なのです。
しかし、近眼の人は遠くはメガネがないと見えません。
遠視の人は若い時は遠くも近くも見えます。それは水晶体の調節力によるものです。
調節がどのような仕組みなのかはいまだ議論がありますが、
一般的には、若い水晶体は柔らかいので伸び縮みすることによって、ピントの調節をしている、と解釈されています。
なので40代ごろから水晶体が硬くなってくると調節力が落ちて、いわゆる老眼になります。ピントを合わせられる幅が狭くなるので、遠視の人は手元が見えなくなります。
また、調節力を最大限使ってスマホなどを見ているので、疲れて眼精疲労になったり頭痛になったりします。
ちょっと脱線して老眼の話になってしまいましたが、近視の話に戻りましょう。
近視は眼球の形が変形することで進行していきます。
理想的な眼球の形は球形ですが、近視の目は奥に長く、左の絵のようにラグビーボールのような形をしています。これを眼軸の延長と言います。
近視の原因は遺伝的な要因と環境的な要因が影響すると言われています。
勿論、親御さんが近視だと、当然目の形が似るので、近視になりやすくなります。
また、先ほどのコロナの影響もそうですが、近くを見る作業(近見作業)が長いと、身体が適応して、眼軸を延ばす作用が働くと言われています。
一度伸びてしまった眼軸は、縮むことはない(身長と同じです)ので、進んでしまった近視が良くなることはほぼありません。
近視はレンズの度数がマイナスで表示されますが、ー6D(ジオプター;レンズの単位)以上で強度近視に分類されます。強度近視眼は、大人になってから様々な病気のリスクファクターになります。網膜剥離、緑内障、白内障、黄斑変性などありとあらゆる病気の危険が、通常の人より高まりますので、近視進行を抑制すれば、こうした視力を脅かす病気も防げるかもしれないと、近年近視抑制の研究が行われています。
近視予防のためのサプリ、トレーニング法など、民間にはありとあらゆる治療がうたわれていますが、実際に安全性と有効性が確認されているものはそんなに多くないのです💦
現段階でその安全性と有効性が研究によって示されているいくつかをご紹介したいと思います。
0.01%低濃度アトロピン点眼…近視はアジア人に多いので、とくにアジアでの研究が盛んですが、シンガポールの研究で0.01%の低濃度アトロピン点眼が近視抑制に効果があった、という研究を基に、アトロピン点眼が臨床応用されています。成長期のお子さんに低濃度アトロピンを夜1回点眼するという手軽なものですが、保険適応はまだないので自費診療となります。
オルソケラトロジー…夜寝る間に特殊なコンタクトレンズを装着して、角膜を変形させ、日中は裸眼で見えるというもので、近視の進行抑制効果があるとの研究報告があります。コンタクトレンズを装着できるくらいのお子さんでないと難しいです。やはり自費診療です。
遠近両用コンタクトや眼鏡の装用…調節不足時の網膜の像のボケが近視の進行のきっかけになっているという説があります。近見作業時に加入度数を入れることで網膜の像のボケを解消し、近視の進行抑制を図るものです。しかし、成長に伴い頻回の眼鏡の度数やサイズ交換が必要になる、正しい使用が難しいなど課題はいくつもあります。
元町マリン眼科では、0.01%低濃度アトロピン点眼による近視の進行抑制治療を取り入れています。
保険診療の対象ではありませんので、診察と治療薬は自費となります。
重大な副作用はほとんど報告がありませんが、薬剤に対するアレルギーなど、副作用が絶対に起こらないわけではありません。
また、効果が必ず保証されるものではありません。そもそも、効果があったかどうかは片眼につけて、つけていない眼との比較をしないとわかりませんので評価は難しい治療です。
次回は治療の流れと費用について説明したいと思います。
この記事の執筆者
元町マリン眼科
院長 蓮見由紀子
所属学会・認定医
医学博士
日本眼科学会認定専門医
横浜市立大学附属病院非常勤講師(ぶどう膜専門外来)