top of page
執筆者の写真HASUMI

霰粒腫に対するステロイド注射による治療

本日も2名の霰粒腫切開がありました。大学病院の先生が見学してくれたのですが、「ケナコルト注射はいかがですか?」と聞かれましたので、私のステロイド注射についての見解を述べます。





消炎が必要な霰粒腫には有効かもしれない


霰粒腫に対するステロイド注射の使用は、保存的治療と外科的切開の中間に位置する治療法として選択されることがありますが、私は単体で行うことはありません。霰粒腫は赤くて柔らかく腫れている炎症期と、消炎したが、炎症の名残がしこりとして固く触れる肉芽期があります。また、両者はしばしば様々な割合で混在しています。ステロイドの作用は消炎にあり、赤く腫れている炎症期には効果があるかもしれませんが、固く触れる肉芽に対しては効果が期待できません。消炎と肉芽組織の摘出は分けて考えるべきです。


炎症が起こっている時期は内容物がほとんどないこともありますが、大抵は黄色い膿のような液が溜まっており、何らかの感染が契機になって炎症を起こしたと考えられます。そんな時は痛みが強く、患者としては膿を出した方が楽になりますし、縮小効果もあります。ステロイド注射は麻酔がいらない、短時間で住むという意見もありますが、炎症が強い時はステロイド注射でも痛いので麻酔をした方が楽です。



ステロイド注射のリスクとデメリット


1.効果の不確実性

ステロイド注射は、すべての霰粒腫に有効ではありませんのでその適応は上記を踏まえて選択すべきです。特に、既に硬くなった霰粒腫や長期間放置されたものには効果が限定的です。複数回の注射が必要な場合もあり、その場合には結果的に外科的切開が最終的な解決策となることが多いです。


2.再発のリスク

ステロイド注射後もしこりは残存するため、再燃する可能性があります。その場合には、最終的に切開が必要になることもあります。


3.局所的な副作用

最も懸念されるのはステロイドの使用による局所的な副作用です。ステロイドの副作用には眼圧上昇、白内障の進行があります。特に小さなお子様では眼圧上昇のリスクが高く、知らず知らずのうちに緑内障が進行してしまう可能性が有るのです。視野障害は一生の問題ですので子どもにケナコルトは絶対に打つべきではないと思います。

また、まぶたの皮膚は薄いため、皮膚の萎縮や色素沈着などの副作用が発生する可能性もあるのですが、他院で打ったケナコルトが皮膚の下に残って白い粒粒となっている症例を見たことがあります。以来私は大人であっても霰粒腫にはケナコルトは使用せず、短期作用型のデカドロン注射を使用しております。デカドロン注射であれば眼圧上昇があったとしても作用時間が短いため、緑内障のリスクは非常に少ないと考えられます。


4.感染や稀な合併症のリスク

ステロイドは局所の免疫機能の低下を招くため注射を行うことで、稀ではありますが感染リスクが存在します。また、非常に稀ですが、眼周囲への誤った注射が眼球穿孔という重大な合併症を引き起こす可能性もゼロではありません。そのため、熟練した眼科医による処置が必須です。



それでもステロイド注射を検討する際のポイント


以上のようなリスクが多く、メリットが少ないステロイドの単独治療ですが、それでも絶対に外科的切開を避けたい方や、麻酔アレルギーがあり、局所麻酔ができない方は適応を慎重に検討してもいいかもしれません。

炎症期の超初期で、硬結がまだ進行していない霰粒腫にも効果はあるかもしれませんが、抗生剤の内服やステロイド点眼による消炎を行い、しこりが残ったら切開すればいいと考えます。


以上は私の見解であり、それぞれの先生がいろんな見解をお持ちです。特に私は切開に対するハードルは極めて低いので、切開がどうしても嫌な方にはあまり寄り添えないかもしれませんが、当院ではアイリッドスパ®というIPLを用いた保存的治療も行っておりますので、霰粒腫でお困りの方はまずご相談いただければと思います。







閲覧数:202回

最新記事

すべて表示
bottom of page